清水

ヤバいやつになりたい。それはもうヤバいやつになりたい。俺の言うヤバいやつとは世間一般でいうヤバいやつのことです。これまでの人生で色んなヤバいやつを見てきたけど、そのほぼすべてに自分は憧れの感情を抱いていた気がする。例外があるとするなら、高一の時に三ヶ月付き合った彼女にLINEで別れを告げられ彼女の家の前で叫んだ友人くらいだろうか。普通にみじめだと思った。ヤバさでいったらかなりの水準だったばかりに残念だ。

やはり「ヤバさ」には自分より強大な者に対する畏怖のような物が必要なのか。その点で言ったら俺の中での「ヤバみ」の頂点に立つのは清水だろう。清水は元々とても大人しい奴だった。俺も口下手で友達が少ない奴ら同士仲良くしていた矢先の「事件」だっただけにショックだった。12月の体育の時間、グラウンドで授業が始まるのを待っていた俺は太ももに強い衝撃を覚えた。振り返ると清水がいた。縄跳びを持っている。追撃が来た。あれだけのエネルギーを細身の大人しい清水が生み出し、それを紛うことなき俺に向けていることの意味がわからず逃げる足が震えていた。俺、なんにもやってないのに。俺がその時の清水に覚えたのはやはり「畏怖」だろう。ていうか怖いだろ普通に。

確かに変わったヤツではあった。一緒に校門から出る時になぜか校門の柵を乗り越えだし着地の瞬間にパーカーのフードを引っ掛からせて完全に首吊りの形になってしまった事もあった。先生がめちゃくちゃ走ってきてなぜか俺が怒られたな。なんでだよ。清水みたいなナチュラルヤバいやつになりたい。でも俺みたいなナチュラル平凡のうんキャラ(うんこみたいな陰キャラ)がなれるはずがないんだよ。もう一度会いたい。どこで何をしてるんだ清水。もうほぼ清水の話になってるな。あとで題名「清水」にしとこ。

でも俺が明日縄跳びで通行人をぶっ叩いたり信号機で首吊りしても清水にはなれないんだろうな。多分。もう清水のエピソード出てこないので終わります。ヤバいやつになりたいという話でした。